政治的に敏感な内容を発表したとして、8か月の授業停止を命じられていた貴州大学経済学院教授の楊紹政氏が、その後大学から正式に解雇された。
楊氏は以前、「中国共産党は政党内のすべての専従職員と一部の非政党系社会団体の職員合わせて2,000万人を抱えているが、彼らに支払われている年間20兆元(約323兆3,500億円)もの給与の出所は、党費ではなく国民が納めた税金だ」と発表して世間を震撼させた。
北京の人権活動家、李蔚氏はツイッターに、貴州大学学長事務局が8月15日付けで発行した楊氏の解雇決定書を貼り付けた。この決定書で楊氏は、「楊紹政は日ごろから教室で、授業と関係のない話をしていた」、「インターネットでしばしば『政治的に間違った言論』を発信していた」などと非難されている。
貴州大学人事部が発行した別の解雇文書の日付は8月16日。

昨年11月10日、楊氏は貴州大学から突然授業資格の停止を伝えられたが、これは楊氏の発言内容に関係していると推測されていた。それより前に楊氏は貴州省公安庁から2度の事情聴取を受けており、さらに十九大の開催中に口を開くなと、あからさまな警告を受けていた。
楊氏は著名な経済学者で、授業停止処分を受けるまで貴州大学で11年間教鞭を取っていた。
楊氏は一貫して立憲政治と法治国家の実現を主張しており、「立憲政治が行われなければ、政党の力は憲法を凌駕する」として、政府高官の資産申告制度を実現し、資産公開を実施するよう主張していた。また「政党が全てをコントロールする体制を改革しなければ、真の市場経済体制は実現できない」とも主張しており、学生らから「誠実で学識にあふれている」、「めったに出会えない素晴らしい先生」と慕われていた。
授業停止を命じられた後、楊氏は新唐人テレビのウェブサイトに寄稿し、中国共産党が党を維持するために、そもそも国民の財産である税金を恐ろしいほどに食いつぶしていることを公表している。
楊氏は文中で「結局のところ、中国で力を持っているのは政党と政府のどっちなのか。地域間での競争は、地方政府の間で起きている競争なのか、それとも政党内の地方支部で起きている競争なのか。国と国との経済競争において、政党は結局のところ、どんな役割を果たしているのか」と疑問を投げかけている。
楊氏はさらに「毎年政党の専従職員と一部の非政党系社会団体の職員が、(公務員でもなく、単なる政党職員に過ぎないにもかかわらず)国費である税金と国有資産の収益により養われている。彼らは政府や軍隊、社会団体、公営企業、事業単位、党務専従機関にまるで細胞のように広がっており、その総数は約2,000万人に上る。彼らのために国民全体が約20兆元もの金を負担している」として「こんなにも莫大な資源を、本当に無視していてもよいのか?」と問題提起している。
さらに「中国共産党は中国大陸の全国民の公金で、党とその関連団体を存続させているが、そのために社会の富を年間20兆元も食いつぶしている。これは国民1人当たり1万5千元(約24万円)の負担に相当する。世界の圧倒的多数の国ではこのような人たちを養ったりしない。人々の負担金はゼロだ」と指摘。
「2つの社会経済圏があると仮定する。人口の規模は2つとも13億5,000万人、人々の最初の所得額も同じだ。だが一方の社会では、国民の税金で養われている政権掌握者の数がもう一方の社会よりも4,000万人多い。すると、2つの社会の生産効率が同じだったとしても、より多くの政権掌握者を抱えている社会の方がどんどん貧しくなってゆく。改革を行わなければ、その社会は最終的に崩壊してしまう」と、共産党政権下にある中国の現状を分析し、警鐘を鳴らしている。
楊氏は西南財経大学経済学院の博士課程修了後、重慶工商大学の講師、貴州大学経済学院教授を歴任。ゲーム理論や高度ミクロ経済学といった、最適化理論やメカニズムデザイン理論に関連する教育や研究に携わっている。中国の経済学術誌『経済学動態』、『経済学家』、『経済学消息報』、『経済体制改革』、『貴州社会科学』、『社会主義研究』といった刊行物に20編あまりの論文が掲載された。うち2つは全国人民代表大会の資料として全文が転載され、他にも多くが国務院発展研究センター、経済研究資料などにより、全文または一部が転載された。
2012年、ネット上に『貴州大学経済学博士、教授、修士課程の指導教官を務める楊紹政の公開遺言書』という文書が広まった。
そこには「もし私が突然死んだら、それは間違いなく貴州大学経済学院の誰か、または経済学院の誰かの関係者から殺されたということだ。私は絶対に自殺などしない」「もし私の妻子に不測の事態が起きたならば、これも間違いなく貴州大学経済学院の関係者の仕業だ」と記されており、楊氏が自身や家族の身の危険を感じるほどの状況に立たされていることが見て取れる。
また「人間にはモラルと尊厳が備わっていることを私はよく知っている。大学内には平等や正義といった理念を持ち合わせておらず、規則や手順を無視して物事を行ったり、教師と学生にも悪影響を及ぼしたりもする悪の勢力が存在する。彼らと戦うために、私は正式なルートで学校長や党書記、学校の紀律検査委員会、省の教育庁紀律検査委員会に書面を送り、問題を告発してきた。だが結局、問題が解決するどころか大学における私の立場はさらに悪化してしまった。現時点で、大学側は私に大学院生の授業も、指導すべき大学院生も割り振っていない。貴州大学経済類学科に誘致された最初の人材として、また博士、教授として、このような処遇は理解に苦しむ」と、忸怩(じくじ)たる思いも記されている。
この遺言状には「命が尽きるまで、平等と正義を守り通す」との文言も記されている。




