高額な医療費を自己負担できず、胃がん治療を断念して家出した一人っ子の息子を転々と探す両親が、中国で話題になっている。
26歳の唐功偉さんは医科大学卒業後、湖南省衡陽市の公立病院で薬剤師として働いていた。今年2月、胃がんと診断された功偉さんは、両親に別れを告げる手紙と自分の銀行通帳を残して、家を出た。手紙には「年老いた両親に我が子を亡くす深い悲しみを味わわせ、経済的重荷をかけることは、私にとって到底償えない罪です」と書かれ、高額な費用がかかるがん治療を断念する心情をつづった。
息子が観光名所、張家界市行きの長距離列車の切符を購入したことが判明すると、両親はそれから数カ月、この都市で歩き回り、息子を探し続けている。
2人を追跡取材したニューヨークタイムズ紙によると、コメ農家である両親の年収は約150ドル(約16,500円)。功偉さんの月収は約300ドル(約33,000円)。中国ではがん治療費の大半は健康保険対象外のため、借金するしかない。このことから、功偉さんは治療を諦めたとみられる。
「息子を探すために、全貯金2万元 (約32万円)を使い果たした」と、56歳の父親は途方に暮れている様子だ。
両親は公安当局に息子の所在を突き止めるよう懇願し続けている。とある地方テレビ局の放送で情報提供を呼びかける両親は、その場で公安当局に電話をしてみたものの、個人情報保護の理由で功偉さんの携帯電話の通信記録を追跡できないと再び断られた。
中国では、がん治療薬の多くは健康保険適用外のため、患者の自己負担額は高額に上る。この分野の専門家は「医療費を下げるのは急務だ。現状では一般市民の経済能力をはるかに超えている」と指摘する。貯金の目的を問うアンケート調査では、「子どもの教育費」「万一病気になったときの治療費」という答えがいつも上位を占める。
薬剤師である功偉さんが治療を諦めた背景には、中国のガン治癒率が低いという現実問題も垣間見える。中国国家癌症中心(癌センター)の統計では、都市部のガン患者の5年間生存率は40%で、総人口の4割強を占める農村部では約20%に低下している。
ソーシャルメディア上では、白血病を発症した弟の治療費を捻出するためだとして、地下鉄駅で「処女を売る」19歳の女性や、双子のガン治療費のためもう一人の娘を売ろうとした父親など、さまざまなケースが書き込まれている。
功偉さんの決断について、中国で議論が繰り広げられている。ネットでは多くの人が自分も同じ状況に置かれたら、同様の行動をとる可能性が高いと発言している。




